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武田鉄矢の「テレビ放映を短縮する覚悟ないなら原発に反対するな」発言を嗤う

2015.04.21 Litera

http://lite-ra.com/i/2015/04/post-1043-entry.html

今月14日、福井地裁が高浜原発3・4号機に運転差し止めの仮処分決定を下した。
高浜原発3・4号機は原子力規制委員会が新規制基準に適合 していると合格判定
を出していたが、樋口英明裁判長は「新規制基準は緩やかすぎて、これに適合し
ても安全性は確保できない」とした。

高浜原発の脆弱さは以前から指摘されており、普通に考えればじつに真っ当な審
判が下っただけだが、原発推進派や保守系メディアはこれに大 慌てで、一斉に
樋口裁判長へのバッシングを叫んでいる。

「ゼロリスクを求めた非現実的なものだ」(「読売新聞」社説)「奇矯感の濃厚
な判断である」(「産経新聞」主張)「専門家の発言に耳を傾けない姿 勢は、
ま さに司法の暴走だ」(「産経WEST」関西の議論)

そして、この列に加わったのが、松本人志がご意見番をつとめる『ワイドナ
ショー』(フジテレビ系)と、同番組にゲスト出演した金八先生で おなじみ、
武田鉄矢だった。

『ワイドナショー』は19日の放送で、高浜原発の裁判をニュースとして取り上げ
たのだが、レギュラー解説者の犬塚浩弁護士が「この裁判官は安全基 準に対し
て大変に厳しい判断を下す」「電力会社側からは非常に不満の多かった、反論す
る機会を十分与えてくれない(裁判官)」「裁判官のある種の方向 性が出た事
件」と、まるで関西電力の言い分を代弁するかのような、解説を加える。

すると、MCの東野幸治から質問をふられたゲストの武田鉄也がこうかぶせてきた
のだ。

「原発が危険である、一旦事故が起こると取り返しのつかないことになってしま
う、それはもう日本国民全員が懲りてる、っていうか十分知ってるわけ ですよ
ね。だから原発は止めてしまおう、というのがもっとも正しい答えなんですけど
も、もっとも正しい答えのまま振る舞えない経済的な事情ってやっ ぱりあるわ
け じゃないですか。ですから“差し止め万歳”っていうふうに簡単にいきません
よね」

さらに勢いづいた武田は、こう続ける。

「たとえば、私どもはテレビ局で仕事しておりますけど、テレビ局にやっぱり電
力を消費しないために1日6時間、放送をやめるとかっていう覚悟が各 局にある
かとか、そういうことまでも込みで考えて原発再稼働を認めずというような決心
をすべきであって、国は間違ったことやってるぞ、はんたーい!と いう、そう
い う単純な話ではもうなくなったような」

あ~あ、またいつものヤツである。文明社会の恩恵を享受していながら原発に反
対するのは無責任だとか、原発が再稼働できなかったらエアコン を使うな と
か、原発推進派はこれまでも必ずこういう論理を持ち出して、反対意見を封じ込
めてきた。しかし、原発か文明的な生活を捨てるかの二者択一し かないわけが
なく、これこそ話の単純化、幼稚な脅し、にすぎない。

しかも、笑ってしまったのが、今回、武田がその脅しに「エアコン」でなく「テ
レビ」をもってきたことだ。テレビが1日6時間放送をやめる 覚悟がな いなら原
発再稼働反対をいうべきではない、だと? この男はエラソーに「経済的事情」
などといいながら、何もわかっていないらしい。テレビが 24時間放送 をやめれ
ばいい、というのは反対派も口にする主張だし、推進派もよく、原発がなけれ
ば、コンビニが24時間営業している便利な生活ができなく なる、などと 脅して
いるが、これはどちらも間違い。そもそも、深夜帯は電気が余っていて、テレビ
が放送をやろうがやるまいが、コンビニが営業しようがすま いが、なんの 関係
もないのだ。

もし、そうではなく、昼間、テレビ放映がなくなってもいいという覚悟が必要だ
と武田が言うなら、逆に言ってやろう。どうぞどうぞ、と。

電力需要が高まる午後のテレビのラインナップを見てみればいい。各局とも、ど
うでもいい内容の情報番組やくだらないワイドショーばかり。 しかも、 結局は
『相棒』の再放送が視聴率トップをとっているような状態だ。一方、BS局は全
局、通販ショッピング番組を流し続けている。こんなものが なくなって誰 が困
るというのか。困るのは、テレビ局とあんたら芸能人だけだろう。

ようするに、武田は自分たち芸能人がテレビ番組に出られなくなるから、テレビ
局の収入が減ってギャラが削られるから、軽々に反原発とか言 うな、と脅して
いるだけなのである。なんだよそれ。

しかも、武田がタチが悪いのは、「原発嫌いなら嫌いって、最初から裁判官にも
言ってほしいですよね」などと述べ、あたかも樋口裁判長が好 き嫌いで判決を
下したかのような印象操作を行ったことだ。

武田は樋口裁判長がどういう状況に置かれてこの判決を下したのか、知っている
のか。樋口裁判長は昨年5月、大飯原発3、4号機の運転差し 止め訴訟 も担当し
て、原発の運転を認めない判決を下している。その結果、今年3月の異動で名古
屋家裁へ左遷されるという、報復人事を通告されていたの である。

福井地裁で判事をつとめていた樋口裁判官のキャリア、そして定年まであと3年
という年齢を考えれば、次は名古屋高裁の陪席というのが通常 のコース だっ
た。ところが、原発再稼働を認める最高裁判所の方針に逆らった結果、家裁とい
う明らかな下級裁判所への降格を言い渡されたのだ。

関西電力はこの左遷人事を知って、判決を別の裁判官に出させようと、裁判官の
交代を求める「忌避」を申し立て、裁判の決着を4月以降へ引き 延ばすこ とを
はかっていた。これに対して、樋口裁判長が裁判所法28条「裁判官の職務の代
行」を使って左遷後も審理を担当し、今回の判決にこぎつけ た。

今回の判決は樋口裁判官が自分の身を捨てて裁判官としての良心を貫いたものな
のだ。それに比べて、テレビという既得権益を守ることしか考 えていないくせ
に、もっともらしい口調でデタラメを語る武田のなんと品性下劣なことか。

ところが、こんなお粗末な主張に対して松本人志も東野幸治もまったく批判しな
い。それどころか、東野は「同じ、同じね」、松本は「これは 問題視さ れてい
ましたもんね」などと、同意する始末だ。さらに、この武田発言を伝えるネット
ニュ―スも同様で、あたかも、武田がコトの本質をわかって いる大人の意 見の
持ち主であるかのようなトーンで報道している。

しようがない。今さらだが、連中が信じ込んでいるらしい「経済的な事情で原発
は必要」という主張がいかに欺瞞に満ちたものかを改めて指摘 しておこう。

というか、彼らの脅しの最大の根拠になっている「原発がなくなったら、電力が
足りなくなる」という論理については、もはや解説の必要すら ないだろ う。今
現在、日本では1機の原発も稼働していないが、電力が足りなくなったことはも
ちろん、ピンチになったなんていう話すらない。今後も省エ ネ技術や LEDの普
及が進めば、電力の需給バランスはもっと安定するはずだ。

こういうと、電力会社や原発推進派は「コストの問題だ」「再稼働しないと電気
料金はどんどん値上がりする」と脅しをかけるが、これもデタ ラメだ。 今月4
月の電気料金は多くの電力会社でむしろ下がっている。これは原油安が進んで火
力発電に使う燃料の輸入価格が下落したせいだが、大方の市 場関係者はむ し
ろ、これまでの原油価格が高すぎただけだと指摘し、アメリカで起きている
シェールガス革命などの影響で、原油価格はこれから長期的に安くな ると見て
い る。

また、石油とならんで火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)のほうは値上
がり傾向にあるといわれるが、こちらも価格は原油価格に少 し遅れて連動する
システムのため、もう少しすると、値下がりトレンドに入るのは確実だ。

しかも、このLNGについては、日本の電力会社が安く買う努力を怠ってきたとい
う問題が隠されている。電力料金は原料価格の上昇分を丸ご と上乗せ できる総
括原価方式であるため、「安定供給」の大義名分のもと、そのほとんどを長期買
い付け契約、売り手の言い値で買ってきた。その結果、日 本の電力会社 のLNG
購入価格はイギリスの数倍にものぼっている。

逆に、原発のコストパフォーマンスがいいというのも真っ赤な嘘だ。原発の建設
費はバカ高く、しかもそこに、核燃料サイクルや核のごみの最終 処分、廃炉な
どの費用などがかかり、その金額は10兆円以上にのぼるのだが、電力会社のコス
ト計算にはそれは入っていない。

これ以外にも、原発を受け入れた自治体への交付金やら原発の研究機関への研究
費、核燃料税、そして国の機関の人件費など、毎年4000億 円以上の金がかかっ
ている。

さらに、福島原発事故を受けて、再稼働には新しい規制基準を満たさなければな
らないが、その対応にも膨大な金額がかかる。電力会社は1兆 円と試算 してい
るが、この試算には「配管の多重化」など含まれていないものも多く、実際はそ
の数倍はかかるのではないかと言われている。さらに、福島 原発事故の結 果、
損害保険の保険料が数百倍にも跳ね上がると言われている。これのどこがコスト
パフォーマンスがいいのか。

また、コストのことを反論すると、原発推進派はふだんは絶対に考えてもいない
くせに環境の問題や将来の資源枯渇の問題を持ち出す。しか し、だったらなお
さら、再生可能エネルギーの普及政策を進めるべきだろう。
 
ところが、電力会社は昨年、再生可能エネルギーの買い取り見直しを発表。太陽
光発電の固定価格買い取り制度(FIT)は2009年からス タートしたが、 電力会
社は買い取る上限を設けると言い出した。この裏側には、電力会社と政府が一丸
となって進める原発再稼働の問題が潜んでいるのは明らか。 この2月に安 倍首
相は「再生可能エネルギーの最大限の導入を進める」と国会で述べていたが、本
気で取り組むつもりなどさらさらないのだ。
ようするに、電力会社や政府、専門家などは原発の既得権益を守りたいというこ
とが最大の目的であり、そのためにわざと原発に依存する体制 をつくり上げよ
うとしているだけなのだ。これは、福島原発事故を引き起こした原子力ムラの利
権構造の完全復活である。
そして、これはマスコミも同様だ。彼らは電力会社の広告漬けになり、電力会社
に仕事を世話してもらうという利権を守るために、再び原発の 必要性を 唱え、
反原発の意見を封じ込め始めた。その最たるものが、武田鉄矢の「テレビが1日6
時間放送をやめる覚悟がないなら原発再稼働反対をいうべ きではない」 発言だ
ろう。

この発言自体は前述したようになんの根拠もないが、背景に「原発の再稼働が止
められたら自分たちの既得権益がおびやかされる!」という恐 怖があることは
ひしひしと伝わってくる。

「決して損得だけで物事を考える人間になるな!」って、金八先生は言っていま
したがね。(田部祥太)





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