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①【再掲】オリバー・ストーン監督 「原爆投下、大統領の説明は全部嘘だった」

 2013年8月18日  田中龍作ジャーナル

http://tanakaryusaku.jp/2013/08/0007743

ストーン監督は最新作『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』
(原題=『The Untold History of the United States』)を引っ提げて来日し
た。 
 
20年来の知己で共著者の歴史学者ピーター・カズニック教授も一緒だ。2人は広
島と長崎の原爆追悼式典に出席し、オスプレイ配備で揺れ る沖縄も初訪問、 基
地などを視察した。去る12日、東京の日本外国特派員協会で行われた英語オン
リーの会見では、常識とは180度異なる歴史観が炸裂し た。

監督はまず、「広島、長崎に原爆が投下された翌年の1946年生まれ」と自己紹介
した。「67年、68年にベトナム戦争に従軍した。 私は“生き残 り”だった。帰国
しても周りになじむまでに時間がかかった」と当時を振り返った。現地と本国で
信じられていることのギャップに気づいたこ とが、ストーン監 督の出発点に
なっている。

「原爆に関して、我々は全てが間違っていることを発見した。(原爆投下につい
てアメリカでは)嘘をついたり、公式に否定したり、検閲 したりしてい た。ト
ルーマン大統領は原爆投下の理由を、『狂信的に抵抗を続ける日本を降伏させ数
十万の米兵の命を救うためだった』と繰り返し説明した が、実は全部嘘 だった」。

ストーン監督らは次のような見解をとる―
ドイツ降伏後、日本は和平を模索していた。アメリカが日本に原爆を落とした理
由はソ連に衝撃を与え、本当のターゲットがソ連であることを 分からせるため
であった。
監督の左隣はカズニック教授。会見場は満席だったが、米主要マスコミからの質
問はなかった。

監督の左隣はカズニック教授。会見場は満席だったが、米主要マスコミからの質
問 はなかった。

カズニック教授は、スミソニアン博物館のエノラ・ゲイ展示に抗議したアメリカ
側の代表のひとりだ。教授は言う。「アメリカ人の85% は原爆投下を 良い事だ
と考えている。アメリカだけは正しいと考える例外主義によって正当化された根
本的な過ちだ。“丘の上の町(アメリカが世界の模範 になること)”の 考え方は
第二次大戦以降ますます強まっている」。

自国の歴史観は正しく、相手国の非難は間違っているという考え方は、ネトウヨ
に限らず世界共通なのかもしれない。

シリア人ジャーナリストが日米関係について質問した。
カズニック教授 「アメリカは帝国を拡大するためのジュニア・パートナーとし
て日本を扱った。60年安保と岸(信介)、72年の沖縄返 還・核持込みと弟の 佐
藤(栄作)、この一族は日本の“Untold History”(もうひとつの歴史)上重要
だ。岸の孫の安倍は、最悪のリアル・ヒストリー否定者だと思う。歴史を否定す
る者には普遍的なパターンがあっ て、勝者だけでなく敗者も歴史を否定す
る」。アメリカでも日本でも権力が歴史を歪曲していると皮肉った。

監督は今回の作品に対して主要メディアの扱いが冷淡だったことを明らかにし
た。「番組はアメリカのネットワークでは一度も放映されず、主要メディ アに
は無視された。だが進歩的メディアはとても支持してくれた。NYタイムズやタイ
ム誌から無視されたのは悲しい。主要メディアはアメリ カ寄りでアメリカ のス
ポンサーの方を向いている。アメリカ批判は企業の興味を引かないのだ」。

メディア状況は日本と似ているではないか。

“Untold History”はCBSの子会社Showtimeチャンネルから放送された。「ツテが
あったから」だという。会見でも質問に 立ったのはほとんどがフリー記者だっ
た。会場は聴衆でいっぱいだったが、橋下会見の時のようにAP通信やNYタイムズ
の姿はなかった。米国のメ ディアは、 アカデミー賞監督が広島や長崎を訪問し
て、ヒバクシャと交流したことには興味がないのだろう。

筆者が調べたところ、NYタイムズは“Untold History”を扱っていないわけでは
なかった。昨年末には”オリバー・ス トーンがまたデマ本を出版?“という書き
出しから始まる書評を掲載していたし、今年1月には「ストーン監督、NYタイム
ズを非難」というタイトルの記事も 掲載していたようだ。

監督はオバマ政権に対しても容赦なく非難した。「ブッシュは法を変えた。だが
今は世界中で盗聴することが制度化されている。これは違法だ。私に とってス
ノーデンはヒーローだ。利益のためでもなく自分の人生を捧げた。オバマはス
ネーク(蛇)だ」。スネーク、と強調すると会場が沸い た。

スノーデン氏やブラッドリー・マニング上等兵が抱いた“自分が明らかにしなく
ては真実が闇に葬られる”という正義感はストーン監督も同じだろう。 アメリカ
が通信を傍受していることは噂されてはいたが、いざ暴露されると世界が驚愕し
た。これも正史では語られてこなかった “Untold History”のひとつだ。

福島原発事故についてどう思うか質問が出た。監督は「原子力の平和利用という
言葉は間違っている」と回答。カズニック教授が歴史をひも解いた。 「アメリ
カは日本で初めての原発を広島に作ろうとプッシュした。反発が強いと知ると岸
の手先のショウリキ(正力松太郎)を使ってプロパガンダをや らせた」。そし
て茶目っ気たっぷりに「明日の読売新聞が楽しみだね」と付け加えた。

日本版を作る考えがないか聞かれると、監督は否定した。カズニック教授が続け
た。「アメリカ版Untold Historyと日本の Untold Historyは関連しあってい
る」。

アメリカ版ができたからには、今度は日本人が自らの手で「もうひとつの日本
史」を創る番だ。2人はそう言いたかったのではないだろうか。 
 《文・中山栄子》





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