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TBS杉尾記者も裸踊り接待…検 察・国税の元担当記者が明かす当局幹部との癒着
の実態
南村 延

2016.08.07Litera

http://lite-ra.com/2016/08/post-1360.html

『新聞記者は何を見たのか 検察・国税担当』(講談社)

「文化芸術懇話会」での言論弾圧発言に象徴されるように、安倍政権と自民党の
メディアへの圧力はますますエスカレートしている。しかし、元はとい えば、
権力をここ までつけ上がらせてきたのは、マスコミ自身の過去の“権力べった
り”の姿勢に大きな原因がある。その一端が垣間見えたのが、 『新聞記者は何を
見たのか 検察・国税担当』(講談社)である。

著者は中日新聞・東京新聞の検察担当を長く務めた村串栄一氏。2013年に定年退
社するまで、数々の政界疑獄事件を担当してきたという。

しかし、そこには、唖然とするような権力との癒着が書かれていた。それを端的
に示すのが、「検察という魑魅魍魎」「匍匐前進の日々」「沈黙 の国税を崩
せ」といった章の末尾ごとに書かれた「エピソード」というコーナーだ。

「検察も人の子」というコーナーで、著者はこう書いている。
 
〈…権力、カネを握れば次は女が定番。ある年の暮れ、法務・検察組織で上位に
いた幹部から筆者宅に電話がありました。「僕の女性問題が週刊誌 に書かれる
らしいんだ。取材にも来た。もう面倒くさいから役所を辞めようかと思ってい
る。辞表を書き終えたばかりなんだ」〉

結局、筆者は聞いたことを何も書かなかった。別の検事が別の案件で検察を辞め
ようとしていた時は、辞表を出すのを思いとどまるよう説得し たとも書いてい
る。 

「特捜部長の谷川岳登山」と題するコーナーでは、特捜部長とマスコミ記者が群
馬県の水上温泉旅行と谷川岳登山に出かけた時の話が出てくる。 1985 年8月13
日のこと。その前日には同じ群馬県の御巣鷹山に日航機が墜落するという大惨事
があったばかりなのに、当時の山口悠介特捜部長の提案 で記者がゾロ ゾロ出掛
けたのだ。また山口氏の自宅近くのスナックでは、しょっちゅう記者が集まって
いたという。

〈山口さんも…自慢のアコーディオンを持参して弾いてくれました。飲み、歌う
に連れ、記者の踊りが始まる。名物はTBSの杉尾秀哉さんの裸 踊り。次いで産経
新聞の宮本雅史さんが三波春夫の俵星玄蕃を唸り声で披露する。事件を忘れて騒
ぎ、朝が来た のです〉

毎日さぞ、楽しかったに違いない。こうした記述の中で特に見過ごせないのは、
「シドニーでの出来事」だ。筆者は、検察にどこまで“協力”できるか を考えて
いたと言う。そんな中で、仕手筋による国際航業の株買 い占め事件が起きる
と、関連取材でオーストラリアに飛び、事件関係者の取材をした。帰国後、当時
の石川達紘特捜部長に呼ばれる。

〈部長室には副部長も同席していました。こちらの情報が捜査に使われるのはど
うかと慎重に対応しました。雑談として話したのですが、副部長 がメモを取っ
ていたのです。「記録には残さないようにお願いします」。マスコミの情報提供
はリアクションも考えなければならないと思ったからです〉

「慎重に対応しました」などと言い訳しているが、取材で得た情報を最強の権力
機構に渡してしまうことに、痛痒は感じなかったらしい。まるで ペンを 持った
岡っ引きである。村串氏の回顧談には、権力監視を第一とすべき報道機関とは思
えない話が次から次へと出てくるのだ。権力中の権力である 検察と、いっ たい
どこで戦っていたのか。検察という権力の監視はどうなっていたのかと呆れてし
まうのではないか。
 
村串氏はたくさんの「独自記事」を書いたのだという。一時国税担当になったと
きも、「書いた国税独自記事は多すぎてほとんど忘れてしまっ た」となんのて
らいもなく、記しているが、こうした独自記事とは、しかし、「きょう強制捜査
へ」といった“発表の先取り型記事”にすぎない。そんな業界の内 輪の「記者ク
ラブ型のスクープ」に血道をあげる一方、検察の違法捜査や見込み捜査はほとん
ど問題にせず、「検察は正義の味方」というイメージを作り上げてきたのだ。そ
れがマスコミである。それが証拠に、マスコミの検察担当記者は冤罪事件に加担
した検事の責任などほとんど追及してこなかったし、民主党代表だった 小沢一
郎氏 にまつわる一連の政治資金問題でも検察にとって都合の良い記事を書き続
けた。

マスコミと検察権力の癒着ぶりは、休刊になった「噂の真相」が1999年に報じた
東京高検検事長にまつわる一件を振 り返っても分かる。この検事長はとんでも
ない女性スキャンダルを抱えていたのだが、多くのマスコミは報じなかった。と
ころが同誌の報道を後追 いして朝日新聞が1面で報じ、検事長は辞任に追い込
まれていく。なぜ、マスコミは先に報じなかったの か。当時の「噂の真相」に
は大手紙の司法担当記者のこんなコメントが出てくる。 

〈(検事長の)黒い噂は、目端の利く地検担当の記者なら誰でも一つや二つ知っ
てますよ。ただ、ご存じの通り、立場上書けないだけ。もし虎の 尾を踏んで今
後、特捜部のネタが取れなくなったら致命傷ですからね〉

知っていても書かない、という驚くべき宣言なのだ。“正義の味方”の検察から出
入り禁止を食らって、事件ネタが書けなくなると、記者自身の社内評 価や出世
にも影響 するのだろう。そんな個人的な事情を優先させ、書かない・書けな
い、とあからさまに宣言するのだったら、マスコミは「国民の知る権利を代行し
ています」み たいな言い分をさっさと下ろすべきではない か。

村串氏の著書にも、この検事長スキャンダルに関するくだりは、わずか10行程度
ながら登場する。こんな内容だ。

〈休刊になった「噂の真相」は東京高検検事長のスキャンダルを炙り出し、辞任
に追い込んだ。雑誌はストリートジャーナルを自認している。週刊誌記 者の粘
り腰は見上げたものだ。新聞が書かない、あるいは書けないネタを堂々と張る〉

「噂の真相」を持ち上げているが、問題は「新聞が書かない、書けない」記事と
は何か、ということだ。書かない・書けない記事は、すなわち 世に出ていない
のだから、読者は何が起きたか・起きていないかすら、知るすべがないがないの
である。

だが、事は何も村串氏個人、検察担当記者に限った話ではない。酒やゴルフ、と
きには金品や女も介在しながら、マスコミと権力は密接なイン ナー・サークル
を築いてきた。古いところでは、田中角栄首相が番記者に現金を配っていたこと
を後に明らかになったこともある。こうした癒着構造は一時、下 火になった
が、第2次安倍政権になって再びあからさまになった。

首相自らがマスコミ幹部と会食を頻繁に繰り返し、安倍首相、今井尚哉首相秘書
官、そして、菅義偉官房長官らが読売、産経などの特定記者と裏でつな がっ
て、謀略情報をリークしているのは 有名な話だ。

そして、これにならうように、一部の省庁では自分たちのいうことをきく特定の
社だけを重用する傾向が強まり、新聞・テレビの側も情報源の官僚に気 に入ら
れようと取り入り合戦がさらにエスカレートしているという。

安倍政権と対峙するために、マスコミはまずこのグロテスクな癒着を断ち切るべ
きではないのか。(南村 延)



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