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①『報ステ』古舘伊知郎が最後の反撃! ドイツ取材で緊急事態条項の危険性、安
倍首相とヒトラーの類似点を示唆  水井多賀子

2016.03.19  Litera

http://lite-ra.com/2016/03/post-2082.html

昨夜3月18日に放送された『報道ステーション』(テレビ朝日)が、いま大きな
話題を集めている。というのも、昨夜の特集は安倍首相が改憲の入 口として新
設を目論んでいる「緊急事態条項」。しかも、ヒトラーが独裁のために悪用した
「国家緊急権」と重ね合わせるという、安倍首相が激怒する こと間違いなしの
内容で、古舘伊知郎キャスター自らがドイツへ渡りレポートする力の入れよう
だったからだ。

まず、古舘キャスターはドイツからのレポートの最初に、こう話した。

「ヒトラーというのは、軍やクーデターで独裁を確立したわけじゃありません。
合法的に(独裁を)実現しているんです。じつは、世界一民主的なワイ マール
憲法のひとつの条文が、独裁につながってしまった。そしてヒトラーは、ついに
は、ワイマール憲法自体を停止させました」「ヒトラー独裁への 経緯というの
を振り返っていくと、まあ、日本がそんなふうになるとは到底思わない。ただ、
いま日本は憲法改正の動きがある。立 ち止まって考えなきゃいけないポイント
があるんです」

独裁の道に走らせたワイマール憲法の条文、それこそが「国家緊急権」だ。「大
統領は公共の安全と秩序回復のため必要な措置を取ることができる」 という条
文をヒトラーは悪用、集会やデモの開催を禁止し、出版物を取り締まり、共産主
義者を逮捕し、野党の自由を奪い、あらゆる基本的人権を停止 させた。ここま
では教科書にも書いてあることだが、本題はここから。この「国家緊急権」が
「緊急事態条項」とそっくりではないか、と言及するの だ。

国家緊急権と緊急事態条項がそっくりだというのは、本サイトでも昨年から繰り
返し指摘してきた。安倍政権は大規模な自然災害時に迅速に対応する ために緊
急事態条項が必要なのだと強調するが、これは建前に過ぎない。事実、自民党に
よる憲法改正草案の該当箇所には、こうある。

《(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等によ
る社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定め る緊急
事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣
議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。》

「災害時のために」と言うわりに、自然災害が出てくるのは最後の3番目であ
る。しかも草案では、緊急事態宣言は国会の承認が必要だが事後でもいい こと
になっており、これは事実上、事後承認でやりたい放題できる、ということだ。

くわえて草案には、ダメ押しで、《この場合においても、第十四条、第十八条、
第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限尊 重されな
ければならない。》とある。つまり、法の下の平等、身体の拘束と苦役からの自
由、思想と良心の自由、表現の自由といった人類普遍の権利で さえ「最大限尊
重」(厳守ではない)程度の扱いになるのである。

夏の参院選で与党が3分の2以上の議席を獲得し、緊急事態条項の新設となれば、
いよいよ本当に安倍首相はヒトラーのように独裁にひた走るのでは ないか──。
実際、昨夜の『報ステ』では、ワイマール憲法の権威であるドイツ・イエナ大学
のミハエル・ドライアー教授にこの緊急事態条項を見せた ところ、ドライアー
教授はこう述べていた。

「この内容はワイマール憲法48条(国家緊急権)を思い起こさせます。内閣の一
人の人間に利用される危険性があり、とても問題です。一見、読むと 無害に見
えますし、他国と同じような緊急事態の規則にも見えますが、特に(議会や憲法
裁判所などの)チェックが不十分に思えます。 (中略)なぜ一人の人間、首相
に権限を集中しなければならないのか。首相が(立法や首長への指示など)直接
介入することができ、さらに首相自身が 一定の財政支出まで出来る。民主主義
の基本は「法の支配」で「人の支配」ではありません。人の支配は性善説が前提
となっているが、良い人ばかりで はない」

良い人ばかりが首相になるわけではない。現状の安倍政権の強権的な態度を考え
ると、じつに含みのある話である。さらに番組ではスタジオゲストと して、昨
年の安保法制の国会審議の際、与党の推薦で参考人として国会に招致され「安保
法制は違憲」という見解を示した長谷部恭男・早稲田大学法学 学術院教授が登
場。長谷部教授は、「内閣総理大臣がそう(緊急事態だと)思えば(緊急事態宣
言を行える)という、主観的な要件になっている。(発 動要件が客観的ではな
く)非常に甘い」「場合によっては怪しいと思われれば令状なしで逮捕される、
そんなことになるということも理屈としてはあり 得る」と緊急事態条項の危険
性を述べ、また、“緊急事態条項が必要ならば憲法に入れるのではなく法律を設
けたらいい話なのではないか”という見解 も示した。

このように、多角的に緊急事態条項を掘り下げた『報ステ』。しかし、古舘キャ
スターは番組中、「ヒトラーのような人間が日本に出てくるとは到底 想定でき
ないんですが」と何度も念を押し、さらには一度たりとも「安倍」という二文字
を発しなかった。

だが、この特集のテーマは緊急事態条項と国家緊急権の類似性のみに留まらず、
緊急事態条項の新設を目論む安倍首相の危険性をも暗に伝えるもの だった。

たとえば、ドイツからのリポートVTRでは、ヒトラーが経済政策と民族の団結を
全面に打ち出したこと、ヒトラーが「強いドイツを取り戻す」とい う言葉で民
衆から支持を得ていったこと、そしてヒトラーは巧妙に言葉を言い換え、独裁を
「決断できる政治」に、戦争の準備を「平和と安全の確保」 と表現していたこ
とを、古舘キャスター自らが紹介した。お察しの通り、これはすべて安倍首相に
置き換えられるものだ。

というよりも、ヒトラーの手法を安倍首相が多分に意識し、真似ているといった
ほうがいいだろう。現に自民党は、自民党東京都支部連合の事務局広 報部長
(当時)がヒトラーの選挙戦略を学ぼうという『HITLER ヒトラー選挙戦略』
(小粥義雄/永田書房)なるナチス礼賛本を出版。高市早苗総務相が「著者の指
摘通り勝利への道は『強い意志』だ。国家と故郷への愛と夢 を胸に、青年よ、
挑戦しようよ!」という推薦文を寄せていた(ちなみに同書は批判が殺到し、わ
ずか2カ月で絶版回収されている)。

まさに、日本がいま置かれた危機的状況のなかで警鐘を鳴らす、渾身の特集。既
報の通り、政権からの圧力によって降板に追い込まれた古舘キャス ターだが、
この放送はそんな古舘氏と番組スタッフたちによる、じつに真っ当な方法による
“政権への反撃”だったのだろう。

古舘キャスターは特集の最後を、こんな言葉で締めくくった。

「とにかく立ち止まってじっくり議論をする、考えてみるということが、この条
項に関しては必要ではないか、その思いで特集を組みました」

こうした重要な情報を視聴者に伝えるのが、本来の報道の役割であるはず。だ
が、ヒトラーよろしく日本の独裁政権はこれを“偏向報道”と呼び、不 都合な事
実を伝えるキャスターたちをことごとく握り潰すことに成功した。まさしくいま
恐ろしい国になりつつあるが、最後に気概を見せた『報ステ』 は、古舘キャス
ター最終日の31日の放送まで見逃せないものとなりそうだ。大いに期待したい。
(水井多賀子)




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